(1)仲間がいるよ!
スタッフM(以下M): 翔子さん、今日はインタビューを受けてくださってありがとうございます。特別養子縁組(*注)を選んだ実母さんが自分の体験を公開したいと思ってくださることって滅多にないんです。とても感謝しています。そもそもどうして話そうと思われたんですか?
翔子さん(仮名、以下S):自分自身が、他の人の体験談を聞きたいと思ったからです。私の場合は、産む前から子どもは養子縁組にすると決めていましたが、産んだ後の1ヶ月が特に精神的にきつかったです。自分と同じ思いをしている人を見つけたくてネットで検索しても、全っ然何もない!養子を迎えた側の体験談はたくさんあるんですけど、出した側の実母の声は何も見つからなかった。
M:たしかに、実母さん側は、自分の体験を発信しづらい環境や心情の人が多いと思います。私たちライフ・ホープ・ネットワークで今まで関わって来た女性たちも、出産した事実自体を家族にさえ伝えていないケースや、出産後すぐに元の仕事や学校に戻らなければいけない事情などもあって、「自分の経験をたくさんの人に知ってもらいたい!」とはなかなかならないんですよね。
S:実母の体験談が見つからないかわりに第三者の意見は出てくるんです。養子に出すのは無責任だとか、産まなければよかったのにとか、批判的な言葉を見つけて傷つきました。私と同じ思いをしている人が絶対いると思うので、その人たちに「仲間がいるよ」と伝えたいです。
M:養子縁組の実母さんが同じ体験をした人とつながる手段はなかなかなくて、孤独になりがちですね。今回は本当に貴重な「体験者の生の声」になると思います。どうぞよろしくお願いします。
2/6へ続く
*注:日本の法律上、養子縁組には「普通養子縁組」と「特別養子縁組」の2種類があります。普通養子縁組では、産みの親と育ての親の両方が子どもと親子関係を持ちます。特別養子縁組では、子どもと産みの親との親子関係はなくなり、育ての親が「実親」となります。祥子さんのように、産みの親が子どもを育てられない場合の養子縁組は、原則として「特別養子縁組」が選択されます。