2023年7月15日

特別養子縁組 実親体験記(5/6)

(5)「死にたい」から「生きなきゃ」へ  


スタッフM(以下M)出産後、翔子さんは一時期「死にたい」とまで思っていたのに、そこからどうやって回復したんですか?

 

翔子さん(仮名、以下S)一人で悩まずにコミュニティがあることは大事だと思います。私の場合、養子縁組の選択を友達に批判されて傷ついたけれど、理解してくれる友達もいました。一番の親友は、「それはあなたが決めたことだから否定も肯定もしないよ」と言ってくれて、今も妊娠する前と変わらず冗談を言い合う関係です。

シンシア(妊婦さんのための宿泊施設の家主)は、私から無理にいろいろ聞こうとせず、私が話したいタイミングで話せるように待っていてくれます。自分のペースで安心して話せる相手がいなければ、今もまだ落ち込んでいたと思います。

 

M死を考えるほどに思い詰める実母さんは、翔子さん以外にもきっといると思います。

 

S私の場合は、養親さんとユウ君と、それぞれに手紙を書いて養親さんに渡しました。その手紙の中に、「幸せになってください」と書いたんです。それを書いた時に「生きなきゃ」と思いました。ここでもし私が死んだら死んだ理由がユウ君になります。それでは幸せになってもらえない。死にたくなった実母さんは、まず一回赤ちゃんを頭の中によぎらせて欲しいです。そしてとりあえず生きて欲しいです。

 

M今もまだ辛いことはありますか?

 

S施設育ちの私にとって、ユウ君は唯一の「家族」でした。その家族を失ってしまって、また孤独になってしまった、という気持ちがあります。周りの人たちを見ながら、なんで私だけいつも一人なんだろう、と思うことがあります。

 

Mそれほどに大きな存在だったんですね。

 

S夜になるといまだに泣くことがあります。でも、将来ユウ君にいつどこで会っても恥ずかしくないように生きたいと思っているので。辛い時にはそれをひたすら思い出しています。

 

M辛いけれど、ユウ君の存在が翔子さんの生きるエネルギーにもなっているんですね。本当に尊いお話をしてくださってありがとうございました。




インタビュー 完

6/6 エピローグへ続く