2023年7月5日

特別養子縁組 実親体験記(3/6)

(3)出産したら感情が飛び出た     


スタッフM(以下M)産む前はそれほど感情的ではなかったのに、産んでから、変わったんですね。

 

翔子さん(仮名、以下S)産んだらもう全然違う。出産前、病院には赤ちゃんの姿を見たくないと伝えていました。なので産んですぐ別室に移される予定でした。でも、産まれてきた赤ちゃんの状態が良くなくて、その場ですぐに処置が必要で、すぐそばで赤ちゃんを見ることになってしまいました。見たら・・・感情が飛び出た。

 

M飛び出た。

 

Sその後赤ちゃんはNICU(新生児集中治療室)に入っていて、退院3日前にNICUで再会しました。涙が止まらなかったです。離れる寂しさで、退院後2週間ぐらいずっと泣き続けていました。

 

M辛かったですね。

 

S産んだ直後が一番きつかったと思います。他の人の赤ちゃんを見るのも辛かった。一時期は死にたいとまで思いました。

 

Mそれほど追い詰められてしまったんですね。

 

S養子縁組のことを話した友達が4人いるのですが、そのうち2人からすごく責められたんです。「子どもを捨てるのと一緒だよ」と言われました。

その言葉が、自分自身が母親に対して持っていた感情と重なりました。私を虐待する母親に、「死ねばいいのに」と思ったことがあります。その母親と自分は同じことをしているように感じて、「自分は生きていてはいけない人間だ」と思いました。

 

Mそういうことを友達に言われたら・・・、きついですね。特別養子縁組をやめたいと思うことはありませんでしたか。

 

Sありました。自分で育てられるかも、と考えることもありました。でもそうすると、(頭の中に)自分の親が出てくるんです。そうすると迷いがなくなります。

 

M赤ちゃんを養親さんに託して約1週間経ちましたが、今はどうですか?

 

S今は、迷いはないです。98%、かな・・・。これから6ヶ月の期間(*注)が長いなと思います。早く6ヶ月後が来てほしい気持ちと、完全に関係が切れてしまうことが寂しい気持ちと、両方あります。



4/6へ続く



*注:特別養子縁組には「6ヶ月間の監護期間」という要件があります。養親は、子どもを6ヶ月間養育した後で、家庭裁判所の審判により特別養子縁組が認められます。正式に養子縁組が認められるまでは、子どもは産みの親の戸籍に入っています。