保育器の赤ちゃんに指を握られ、溢れた母性
[前回のあらすじ:妊娠16週から始まったライフ・ホープ・ネットワークでのホームステイ。子供の幸せのためには特別養子縁組が良いと思いながらも、決意が揺らぐ日もありました。そんな中、妊娠27週で突然破水してしまいます。]
突然の破水
シンシアさんはアメリカに帰っており、サポートメンバーの方々が病院へ来てくれて
個室に移り、お腹の張り止めの点滴をしてもらい、ベットの上で動くこともできず
羊水はほぼなくなっていて、先生からは
「今産まれてしまうと、肺がまだ成熟していないからNICUで人口呼吸器を使うことになります。だから少しでもお母さんのお腹にいてほしい。でも、赤ちゃんが苦しそうなサインが出たら緊急帝王切開します。いいですか?」と言われました
「お願いします」と答える意外の選択肢はありませんでした
「お願いだから、少しでも長くお腹にいてね」と願うことしかできず、赤ちゃんの肺の成長を促す注射をお尻に刺され安静を保つ事に専念しました
次の日の診察で「今から帝王切開します」と言われ、看護師さんに着替えをさせてもらい
手術室へ運ばれ、背中から麻酔の注射を入れてもらい
麻酔が効いているか何度も確認してもらって
帝王切開が始まりました
初めての手術、意識がある中で処置される怖さ、赤ちゃんの心配から涙が止まらず
看護師さんがずっと「大丈夫だよ」と声をかけながら、私の震える手を握っていてくれました
ピッピッピッ…と私の心拍音と先生方の器具を扱う音が数分聞こえた後、「産まれますよー!」と言われ「ふにゃ」と、とても小さな声で泣いてくれたのを覚えています
先生方が「泣いてくれたー!」と嬉しそうに言ってくださって
傍に待機してくれていたNICUの看護師さんの所へすぐに運ばれ、処置をしてもらい少しだけお顔を見せてもらって、赤ちゃんはNICUへ運ばれました
シングルマザーになるか特別養子縁組するか決まらないまま、赤ちゃんが産まれてしまった
「どうしよう」ずっと頭の中が混乱していました
次の日、リハビリを兼ねてNICUまで歩いて赤ちゃんに会いに行きました
保育器に入っている赤ちゃんは沢山の管に繋がれ、一生懸命生きようと頑張っている姿を見て涙が止まりませんでした
1044gで産まれてしまった赤ちゃんは
私の両手に収まってしまうほど小さく
担当医の先生から「産まれてから72時間が1番危険なんです。栞さんのベビーは脳内で出血していて障害が残るかもしれません」と伝えられた時は「ごめんね…ごめんなさい」と心の中で何度も何度も謝ることしかできず、NICUの看護師さんが背中をさすって傍にいてくれました
保育器の中に手を入れると、1000gしかないとは思えないほど力強く私の指を握ってくれました
その時に、言葉にするのが難しいのですが
「母性」というものが溢れてきました
愛おしくて、可愛くて、ずっと触れていたい気持ちでいっぱいになったのです
(続く)
<前回までのお話はこちらから>